住基ネット

そういえば、僕は東京都杉並区の住民である。そして杉並区は、
http://www4.nikkeibp.co.jp/NCC/top10_news/ncc3632.html
などで報道されているように、「横浜方式」、すなわち、「将来の全員参加を前提にしつつ、住基ネットの安全性が総合的に確認されるまでは、住民票コードをネットワークに送付するかどうかは市民/区民の判断に任せる」方式での住基ネットへの接続を決定している。というわけで、僕のところにも、「本人確認情報非通知申出書」が送られてきた。
住基ネットに対してはさまざまな立場の方がいるだろうが、僕は生活レベルでは(生活レベルでは、というところを強調したのは、これとは別のレベルで「環境管理型権力」がどうの、というきわめて複雑で哲学的な問題があって、それはそれで考えるべきものだからだ)、ネットワークを介して行政サービスが充実するのは悪いことではないと考えている。しかし、そこに一定のリスクがあるのも疑いない。だとすれば、住基ネットへの参加・不参加は、市民ひとりひとりがサービスの利得とリスクを天秤にかけて決定すればいいことである。もし総務省の言うとおり住基ネットがそれほど便利なものなのであれば、クレジットカードのように、放置しておいても勝手に普及することだろう。したがって、僕は「横浜方式」を支持しており、自分が住んでいる自治体がそれを採用してくれたことは素朴に嬉しい。
とはいえ、今回送られてきた書類を読んであらためて考えたのだが、サービスという観点からすると、この「横浜方式」にも大きな欠陥がある(いまの住基ネットはそういう観点で整備されたものではないので、当然なのだが)。それはネットワークへの「不参加」は選択できるが、「離脱」は選択できないということだ。たとえば、杉並区では、今回送られてきた書類の提出が、住基ネットへの非通知を選ぶ最初で最後の機会で、ここで書類の提出を忘れると自動的に住基ネットに情報が送られてしまい、あとでそこから情報を引き上げることはできない。お試し期間もないし、契約の解除もできないのだ。
というわけで、論理的に考えて、僕は今回は非通知の申請を行っておくのが賢明だと判断した。あとで住基ネットに入りたくなったら、いつでも簡単に入れる。そのときに決めればいい。
思うに、もし総務省がそれほど住基ネットの利便性に自信があり、かつ参加者を増やしたいのであれば、参加と離脱を自由に認めるシステムにしたらいいのではないだろうか。住基カードの申し込みも驚くほど少なかったという話だが、こんな不自由な「サービス」なのであれば、普及しないのも当然である。